暮らしを支える通信技術の研究
新しい通信技術5Gで新しいサービスを生み出す
私は今,5G(ファイブ・ジー)という新しい通信技術の使い方を考える研究をしています。5Gは2020年春から始まった新しい通信方式で,これまでの方式よりも,離れた場所に一度にたくさんの情報を,遅れることなく送り届けることができます。
5Gを使うことで,病院が近くにない人や病院に通うことが難しい人が,スマートフォンやパソコンを通じて,ケガや病気の症状がある体の部位を鮮明な画像で送り,離れた場所にいる医師の診察を受けられるようになります。
また,自宅にいながら,スポーツの試合を選手と同じ目線で観ることができたり,音楽のライブ会場の最前列にいるような迫力満点の映像や音楽を楽しんだり,これまでできなかった新しい体験,新しい経験ができるようになります。
5Gで社会の課題を解決する
私が5Gを使って研究しているもののひとつが,「漁網遠隔監視」です。これは,水の中をドローンで撮影し,その様子をスマートフォンやパソコンで操作しながら自由に水の中の様子を確認できる,というものです。例えば,牡蠣(カキ)の養殖などでこの仕組みを使えば,網を引き上げることなく,海の中がどのような状態になっているかがわかります。
また,わざわざ海に出なくても,離れたところから水の中を見ることができるので,漁業を効率的に行えるだけでなく,働き手不足の解消にもつながるかもしれません。
ほかにも,5Gを使って,工場でこれまで人がやっていたことを無線で人がいなくてもできるようにするというプロジェクトなども担当し,5Gを使って,どのようなサービスを生み出すことができるのかを研究しています。
いろいろな会社の人と協力して実験を進める
ふだんの働き方は,パソコンで調べものをしたり,アイデアを考えて計画を立てたりするなど,デスクワークが中心です。5Gの使い方を考えるほかの企業や,社内のメンバーと打ち合わせをすることも多いですね。
また,NTTドコモの社内にある実験室でいろいろな実験をすることもあります。例えば,「電波暗室」という特殊な部屋で,新しい通信技術の使い方を実験することもあります。
一方で,たとえば,漁網遠隔監視の実験では,牡蠣の養殖場や工場など,実証実験を行っている場所にも足を運びます。実際に現場で働いている人たちと話をすると,通信会社として私たちが考えている課題と,現場の課題がまったく違うこともよくあります。そういう一つひとつが新しい発見となり,とても勉強になりますね。
5Gの技術を社会で役立てていくには,関係する多くの人たちとの協力が欠かせません。
新しい未来をつくるワクワク感
この仕事の一番のやりがいは,これまでになかったような未来を新しい通信技術でつくる,というワクワク感です。今では当たり前になっているスマートフォンのように,自分が研究している成果がみなさんの「10年後の当たり前」になると思うと,仕事にもやる気がわきます。
そして,5Gの次には,6Gというさらに新しい通信技術が待っています。6Gはまだどのようなものになるかはっきりしていませんが,海や空でも通信がつながって,飛行機や船の上からも自由に通信をつなげられるようにしたいと思っています。また,電池をほとんど使わない通信を目指しているので,将来,「携帯電話やスマートフォンをいちいち充電して使っていたの?」となるかもしれません。
このように将来の当たりまえを考えて,その実現のためにさまざまな研究や実験をするのが私の仕事です。しかし,自分が研究していることやアイデアが,必ずしも実現するとは限りません。だからこそ,自分のやっていることが本当に社会で役立つものになるように,日々努力を重ねています。
社会を支え,進化させる「通信」という仕事
「やればできる」を実感した中学受験
勉強も部活も,ゲームも楽しんだ中高時代
私が入学した学校は中高一貫校で,全員が難関大学を目指すような進学校でした。また,勉強だけでなく部活動も盛んで,忙しい中高時代でしたが,好きなゲームもやりたかったので,特に勉強は効率的にやるように心がけていました。
試験や受験のとき以外は,勉強は学校で終わらせる,というのが私のやり方でした。毎日,1時間早く登校して予習や宿題をしたり,放課後も部活動のない日は図書室で勉強をしたりしていました。その方がダラダラせずに,限られた時間で勉強に集中できたと思います。
その分,家ではリラックスしてゲームを楽しむなど,メリハリのある生活をしていました。
やりたいことや目標,ゴールを決めたら,それを実現するための計画を立てて,それを一つひとつクリアしていくこと,それが大人になった今でも仕事に生かされていると思います。
好きなことにチャレンジして成功体験を
通信会社であるNTTドコモでは,「どこでも,つながる」ということをとても大切にしています。そして,通信の力で,もっと便利な社会をつくっていきたいと考えています。
今は通信につながっていないモノも,これからどんどん通信につながって,もっと便利な世界がやってくるはずです。みなさんが使っている鉛筆やシャープペンシル,消しゴムなどにも通信機能がついて,自然と字がきれいに書けるようになる,ということもあるかもしれません。
技術の力で,みなさんが大人になったときに,ワクワクする新しい未来の社会を一緒につくっていけることを楽しみにしています。
そのためにも,みなさんには簡単なことでいいので「できた」と思える小さな成功体験を子どものうちからたくさん経験してほしいですね。ゲームでもなんでもいいので,ぜひ自分の好きなことをどんどんやって,「やればできる」を実感してください。